誰に急かされたわけでもないけれど
このくらいはしていい程には長い付き合いだと思っている。
甘えんぼ
山県が何の約束もなしに、単に少し時間が開いたからただそれだけの理由で井上の家を訪れた。とりあえず、しばらくは誰とも面会はしないという話は桂から聞いていた。だから突然の訪問にも、先客はないだろうと踏んだ。
今日は朝から雲が重く立ち込め、空気も多分に湿気を含んだ陰気なものだった。
案の定取次が驚いたように来客はすべて追い返すように言われているので、と口ごもらせたが、単身乗り込んできた山県が無言で動かないのを見てため息を付き付き奥へ向かった。そしたらすぐに、通された。拒絶されたら無理にでも通って行くつもりではいたが、案の定だった。
物事にはいつだって例外が存在する。
井上の絶対に誰もいれるんじゃねーぞ、の例外は大抵自分と伊藤と渋沢だった。
「どうした山県」
二人、部屋に入ったはいいものの、こう言われて山県は逆に戸惑ってしまった。
どうしたもこうしたも、ない。別に自分はどうともしてない。
もうあの日から一週間近くは経つのに、思いっきり泣きはらした真っ赤な目でいつもみたいにニヤリと笑われては、そもそもこっちはどうすればいいというんだ。
ここで改めて山県は自分がどうするつもりでここに来たのか珍しく(自分の中では)何も考えていなかったことに気づいた。
とりあえずここに来れば、井上が喚くなり暴れるなりなんなりしてくれるだろうと勝手に思ってたのかもしれない。
あるいはいつもみたいに、もう一人が喚くなり暴れるなりなんなりしてくれるだろうと。
「おい」
反応に困ってしまった山県が黙ってソファーにかけただけだったので、さしもの井上もやはり困ったように笑った。
「仕方ないな、お前らは」
そうして、立ち上がって、山県が視線で追っている間に、山県の隣にどっかと座りなおして、おもむろに(むしろ乱暴に)肩を引き寄せた。突然のことに驚いてもろに重心を崩した山県なんぞにはお構いなしで、そのまま抱きしめられてしまった。
暴れればいいのか受け入れればいいのかとっさの判断がつかず硬直状態に陥ってしまった山県だったが、井上が背中をぽんぽんとこの男にしては驚くほど優しく叩いてきたので、あぁ、と思ってそのままにした。
慰めて欲しいと思われたのだろうか、むしろ逆なのだが。
確かに結局やり方も何もわからないままだが、そんな気を使わせるために来たわけじゃない。
違うのだが、井上がよしよしとでもするように山県を抱きしめたまま絶対に離してはくれないので、なんというか昔ならまだしも一体今この状態を他人が見たらどう思われるだろうか、いやもはやなんとも思わないのではないのかと軽く寒気のするようなことを考えた。
それは周りの人間がどれだけ見てようとお構いなしに大げんかしたり抱きついたりしあっていた伊藤と井上の姿そのままで。
「井上さん」
「なんじゃい」
山県が結局何も言わなかったので、そのまま部屋は静かになった。曇り空はいつの間にか雨がふりだしたようで、ガラス越しに水の跳ねる音がかすかに聞こえる。
狂介は甘えぼじゃのう、と井上が突然楽しそうに言ったので、絶対に絶対にそんなわけあるかと思いながら山県は目を閉じた。もう少ししたら、客が来る、自宅に戻らなくてはいけない。
慰めなくてはだなんて、傲慢だったのかもしれない。
もしくは、ただの自己満足だったのかもしれない。
あるいは。人の腕の中でふと思う。ただの言い訳だったのかもしれない、と。
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なんてゆーかブミガタと御神酒を一度に数倍楽しめる聞ガタの無限の可能性!!
とかいうテンションでこんなしみったれた話ができました。何。
聞ちゃんは伊藤とガタを死ぬほど甘やかしてたらそれでいい。
人心掌握に長けてるガタは(笑)ちゃんとそれに気づいて
そのまま甘ったれてる方がいいんだってことにも気づけばいい。
それで始めていとーがいないことに向き合えたらもっといい。俺が。
うぉおおお三尊んんんんひぇえええええ
読み物 / 2011.08.11