タロミヨ→桂園→キンミヨでお買い物。


To Go 
OR
Not To Go ?  ~桂園巳とお買い物~




shop1:タロミヨ 


「いやでもだって巳代治この値段を見てみなよ!それでこんな小ささだなんて誰が満足できるっていうの?
 そりゃ見た目の品もすばらしいし使ってる食材もいいのばかりだしでもお菓子って食べてみてこそのものじゃない?こんな大きさじゃ児玉だって足りないに決まっているそして僕なんかとっても我慢できない!」
「桂さんのそのお腹を考えたらそりゃそんな小指の爪にも満たないような砂糖菓子で満足できるわけないじゃないですか。しかしですね、世の中大きさでははかれない価値というものがあるんですよいい加減そういう眼も身につけたらどうですか」
「なにそれ小指の爪って?眼とか言うけど少なくともこの僕のかわいらしいくりくりの目玉一個くらいはあるんじゃない?」
「何その例え気持ち悪い!それにそういう大きさの話じゃありませんよ重さの話です」
「僕はそんなに太ってないよ!最近はほら、ダイエットの成果が・・」
「そのダイエットを指導しているの、誰だと思ってるんですか?
 今日だってダイエット中の桂さんでも楽しめるような場所を、と思って出かけてるのに桂さんさっきから甘味か食事処ばっかり!粗食をアレンジした最近話題の新しいお店に行こうって約束忘れてるんですか?」
「何を言うか、巳代治だって嬉しそうにひょこひょこついてきてるくせに。それにその店に行く前にこっちの道をちょっと・・とか言ったの誰だよ」
「それは、京都で有名なお店が、こちらにも新しく支店を出すって西園寺さんが」
「ふぅんそんならわざわざ僕と行かなくたって、もっちに買ってきてもらえばいいじゃない」
「桂さんと一緒なんてこっちから願い下げです。西園寺さんと行きます」
「何それ、僕と一緒できるのを願い下げるなんて。将来もっちと僕、どっちが出世するかな」
「出世?その真っ黒な腹で病気になって早死にしないといいですね」
「巳代治みたいに寂しい老後を過ごしてぽつねんとしぬよりかはそっちの方がまだましかもね」
「何ですって、勝手に私の未来を貧弱な妄想で決めつけないでいただけます」
「それはこっちの台詞だよ、じゃないとどうして僕と一緒を嫌がるんだよ」
「桂さんは首根っこをひっつかんでおかないと、何を買い食いするかわからないからで」
「よく言うよね一緒にダイエットしている巳代治くん、お前だってさっきからどっちのお菓子にしようか悩みまくっているじゃないか」
「悩んでいるのは桂さんで私は単にアドバイスをですね」

 春爛漫、店先に並ぶのは見た目も愛らしく華やかな和菓子。

「わかった、じゃぁ今から食べるのはこっちのおっきなお団子にして、こっちのは閣下とお花見に行くときに持って行こう!」
「あら山県さんが桂さんとお花見につきあってくれるなんてそんなことがあるんですか。山県閣下も春で頭がおめでたくなってしまったんですねおかわいそうに」
「僕の閣下の頭に桜が生えただって?お前の閣下なんてさぞかし春だからってうきうきと新橋に足繁くお通いなのだろうね」
「人のことをいえるんですか桂さん、もう少しスリムになってから女性を口説いた方がいいですよ」
「そういう巳代治は一緒にお花見してくれる女性も閣下もいないんだろう」
「失礼ですねこの私に向かって相手の女性がいない?鏡を見てからものを言ったらどうですか。それに閣下との花見の予定もちゃんとあります」
「あっそ、まぁどうでもいいけど。それで巳代治はどっちにするの」
「・・・では、これを」
「あっ、お前嫌らしいぞそれは僕が閣下との花見の時までおいておくんだから、」
「桂さんが変なものを持って行ってこれ以上山県さんに嫌われやけ食いして見苦しく太らないように、私が今毒味をして差し上げるんですよ」
「じゃぁお前もこの団子のセットを伊藤さまとのお花見に持って行くんだね、これ以上巳代が伊藤にすげなくされて嫉妬のあまり髪振り乱してわら人形持ち出さないために僕が毒味をしてあげるんだから」
「こんな甘ったるそうなのお酒飲みながら食べられませんよ。末松に全部とられるのが落ちです」
「花見に団子がなくてなんとする」
「そういう桂さんも団子は持って行かないんでしょうが」
「え、あ、それもそうだよね。うーん」
「花見の団子ならこっちのお上品なおはぎのセットの方が」
「うわぁ何それおいしそう!どこにあったやつ?」

 二人がそれぞれに荷物を抱えて、ついでにそれぞれのお菓子をほおばって、店を出るのはまだまだ先の話。
 


しぇあ、という関係

 結局半分こにしたけれど、味わえる楽しみは2倍になって、なんとも釈然としない不思議な気分になりましたとさ。





shop 2 : 桂園


 料亭を出て、西園寺が少し歩きたいと言うので、桂も酔い覚ましにでもと一緒に歩き出した。小さな店がぽつぽつと建ち並ぶ静かな夜の通りを、多くの共を後ろに引き連れて見て歩く。ほんの気まぐれな散歩だが、店の者も通りの者も、おつきの者にとっても、良い迷惑なのだろう。
 現首相の桂と、枢密院議長の西園寺が並んで冷やかしにくるのだから。

 西園寺がふらりと店に入ったので、桂も続いて中に入った。
 日頃ランプの光に慣れてしまった身には、隅で揺らめいている行燈の灯が酷く懐かしいものに思える。西園寺が熱心に眺めているのは小さな匂い袋がたくさん下げられている一角で、こぎれいで控えめな色の袋に、繊細な模様が施されている。二人は今まで散々ヨーロッパの芸術を見てきたけれど、こればっかりは日本だって負けてはないと、よくわかりもしない芸術論を思うのだ。
 西園寺はひとつを手にとって、しばらく丁寧に眺める。どうやら気に入ったらしい。
「それ、何の花?」
 こんな種類の中から迷いなく一つを取り出すなんて、桂よりかはよっぽど目の肥えて居るであろう西園寺に何か思うことでもあるのかと、些細な興味で尋ねてみる。
「藤、やね」
「もっちは、藤が好きなの」
「・・こちは、藤原ですから」
 あぁそうだったけ、と桂は頷いた。桂にはよくわからないお公家さんの家々のなんやかんやで、西園寺は西園寺だけど実は藤原という、意味のわからないことになっているのだ。
別にそれほどでもないのにわからない、で一蹴してしまうのは、桂だって明治の世の前はそれなりの武士の家の子だから、お家のことに他者が首を突っ込むのがいかなる迷惑で不毛でどうしようもないことか、よく知っているからだ。

「かわいい」
 西園寺はそれだけ言うと、店の人間を目で捜した。その一言がお買い上げ決定なのは言うまでもない。
 桂は隣で、しばらくその数々の匂い袋を見つめる。そうしてにやりと満足そうに笑うと、西園寺と同じ藤の匂い袋を手に取った。
「僕も」
「・・なんで?藤、好きなん?」
 西園寺は怪訝な顔でそんな桂を見る。
「いやぁ、僕のじゃないんだ。人にあげるんだよ」
「誰?」
「巳代治。あいつ折角僕が用意してやった閣僚の椅子、蹴りやがったから」
 聡い巳代治なら、あえて藤を送る桂の嫌がらせの真意はすぐに気づくだろう。そうして憮然とその匂い袋の処置に困るに違いない。
「あの子やったら、気に入ると思う」
 なにかそういうところで気の合う西園寺がいうのだから、そりゃ袋自体は気に入るはずだ。桂はうんうんと何度か頷いた。
「もっちとおそろいだって、言っとくよ」
「そう」
 こちら西園寺は桂の意図がわかっているのかわかっていないのか、さらりと桂の話を聞き流して、もう一つ、かかっている匂い袋を取り出した。
「なら、桂はんも」
 おそろい、と言いたいのだろうか、さして食べもできない匂い袋に興味などない桂は、それが何を意味するのかよくわからなかった。
「桂木の、」
「あぁ、なるほどね」
 手渡された匂い袋を受け取って、桂はにっこりと笑った。
 


藤と桂木

 僕と君のおそろいということは、新世代の象徴になるかもね!




shop 3 : キンミヨ

 政党に足を突っ込んだ伊藤が、再び枢密院議長に返り咲くとはなんぞや。 

「でね、なんや名前もよう知らん人やってんけど、いきなり捕まえられてそんなことを延々と喋ってくるんよ」
「はい」
「めんどくさくなったから、『そういう話は巳代治か高島にし、』って言って、別れてんね」
「勝手に巻き込まないでくださいよ」
「それで」
「はい」
「そういえば最近、お買い物行ってないなと思て」
 そうして西園寺はにっこりと笑って、巳代治の腕を取った。
「西園寺新総裁が松田さんを引っ張ってお買い物に興じられているので、仕事をほっぽりなげられ最悪に機嫌の悪い原さんと仕方なく話をした面会をドタキャンされた桂さんに、この間散々愚痴られましたよ」
「たまには、自分の分の荷物を自分で持ちたいお買い物も、あるん」
 それは松田との買い物の時自分は一切荷物を持たないと公言しているようなもので、もし荷物が少なければ、自分も全く同じ運命をたどらされるであろう一種の脅しでもあり。
「ついでに桂はんに、おいしいワインでも買うたろかな。こないだの、お詫び」
「・・ちなみにその荷物(ワイン)は、誰が持つんですか?」
 ヨーロッパ仕込みの自由平等主義につかったやんごとなきお方は、きらりと目を光らせた。
「荷物の、少ない方」
 多分、どちらもワイン一本、持てそうにないから、そのまま今夜予定されている首相との面会に
荷物を持ったまま流れ込んで、3人で部屋にあるワインを空けることになるのだろう。 



自由平等主義者の先輩

(だからね、原君。そんなに総裁不在の留守番が嫌やったら、お買い物つきあってくれればええのに)
(留守番で、結構です)





**おわり**



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

もうね、なんなんこの3人。可愛すぎねそうだよね可愛いよねもぉおおおおお可愛いよねぇえええ!!!←
はぁはぁ、超楽しかった。お買い物行きたい。買いはしないけど。ウィンドウショッピング万歳。

簡単な言い訳とか。

・しぇあ、という関係(タロミヨ)
こいつらの会話止めどなさ過ぎる。そして中身がなさ過ぎる(笑)
和菓子とか色々写真探したけど、もう会話以外いらないか・・・と・・・
まだまだ二人とも閣下大好きな明治20年あたりの話。
シェアしてるのはお菓子だけじゃなくて、そういう気持ちなのですよ。
なんかタロとミヨの仲は桂(1)内閣のとき巳代治が閣僚断ってから冷めちゃいました的なのを見て、やっぱりそれまでの奴らはこう同じような温度でパッション持って仲良しだったのではなかろうかと・・
温度差が出始めたあたりが、次の話。

・藤と桂木(桂園)
この二人は結構安定した仲良しなイメージがある。
お互いがお互い全く別の方向を向いているからこその仲良しというか、タロミヨとは全然逆で。
なんというか最終的に太郎ちゃんが公望はもっちだとわかってやってるような(イメージイメージ、あくまで)
政治とか絡んできても、なんか私情を優先させちゃうような感じ。
この二人はこの二人で第二世代を代表するにちょうど良い関係だったと思う。そうブミガタのように!

・自由平等主義者の先輩(キンミヨ)
女子校の先輩後輩としか言いようがない\(^o^)/
この二人はなんか巳代治が西園寺を慕ってて西園寺も巳代治をかわいがってるみたいな・・・え、やっぱ女子校の先輩後輩って奴ですか
ついでに公私をすっぱり分けてそうだなぁ・・政治はそれ、お買い物はこれ。
西園寺にとって荷物持ちも一緒に買い物いく相手も同じくらい大切だといい。
滅多に後者がいないだけで。密かに原君と一度行ってみたいと思ってるといい。


春このごろ。




読み物 / 2010.03.30

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