小説の恋とはほど遠く。


case1:


 こいつといるとホント疲れる。
「閣下、」
「あぁもうわかったよ」
「まだ何も言ってませんが」
 そうして巳代治が差し出す書類を受け取って、そのまま机に突っ伏し、八つ当たり。
「お前といるとホント疲れる」
「それ、私のせいですか?仕事のせいでしょう?」
「1日のうち、絶対仕事上の疲労より、お前と一緒にいることの疲労の方が大きい」
「そんなの自業自得じゃないですか」
「何でそうなるんだよ」
 巳代治がふふん、と微笑んだ。なぜこの場面での微笑みが、綺麗なのはいいとして、しかしそんなに冷たいんだこいつは。
「本気にさせた、閣下が悪いんです」
 多分そうなんだろうな、と珍しく伊藤は謙虚にもそう思った。

後退と言う名の進歩

人知れぬところで本気になってる人間が一番タチ悪いと思います。



case2:


「閣下ぁ~んw」
「何だ」
 背中から突然ぎゅうぎゅうと容赦なく抱きついてくる小さな部下に投げやりに尋ねてみる。
「今日も、大好きですっ」
「・・・」
 何度も何度も、毎日毎日、よくも飽きずにそんな大仰な台詞を満面の笑みで言えるものだ。
「桂」
「なんですか?」
「・・・いや」
「閣下がわかったと言ってくれるまで、何度でも言います」
「・・わかった」
 山県はそう言い、桂をひっぺがし歩行を再開する。
「本当ですか?」
 そうして好きなように腕に絡みつかせ、一緒に歩くこと、廊下の角まで数歩。
「じゃ、明日もわかってくださいね!」
 そうして反対方向に向かう、相変わらずの満面の笑み。
 毎日毎日繰り返される、熱烈片思いアタック相思相愛(?)そして別れ。
 これまた毎日繰り返す、ため息をついて今日も山県は桂に背を向けた。

現状維持

当初タイトルは『連打 F5』でした(...)



それが恋?(自分のことは棚にあげて!)




読み物 / 2011.08.11

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