「というわけでかっかぁ~どうしましょう!!」
 桂の後をついてふたたびどこかうっそうとした木々の間を駆け抜けると、目の前に見事な日本庭園が開けた。先ほどと同じように木にもたれながらそれを眺めていたらしい山県は面倒くさそうにしっぽをゆらして振り返りもしない。
「いちいち私のトコロに来るな」
「狂介っ!そんなことを言って庭を眺めている場合じゃないよ、早くどうにかしないと!」
 桂よりも早く山県の前に回り込んだ木戸は口挟む間を与えずして山県に詰め寄る。若干驚いたような顔を見せた山県だったが、すぐにいつも通りに戻ると桂を呼んで指示を与えた。

「桂、お前は海軍のところに行ってそのバルチック艦隊は東郷にでも何とかしてもらえ。そちらの方、陸軍から乃木と児玉を出しますから、どうにかしてきてください」
「なるほどっ、二人に何とかしてもらえば個々の結果はどうあれ全体的に何とかなる計算ですね!それではそういうことなので、よろしくおねがいしまーすっ」
 耳をピンとたて元気よく笑顔で敬礼する桂。その笑顔に思わずこちらも笑顔を返しかけたそのとき、
「・・え?私がどうにかするって?」
しかし桂はすでに駆けだした後。


「ちーすよろしくお願いしマース」
「よろしくお願いいたします。」
 木の陰から山県のような猫耳に猫のしっぽを持った柔和そうな男と、リス耳にふわふわのリスのしっぽを持った小さな男が同じく敬礼をしながら現れた。
「いつから陸軍のトレードマークは猫耳になったんだい」
 思わず木戸が尋ねると、乃木が礼儀正しく「ずっと以前からです」と答えた。
「児玉が子リスなのは、いわゆる歴史的な理由があるのであって、立派な陸軍の人間ですよ」
「・・・・っ、いや、いい、お前がそれで今のところ楽しそうにしてくれるなら」
 そうして木戸はお共の二人をつれ、しかたなく陸の対戦に向かったのだった。







 これはいよいよ何かがおかしいぞ。

 どうにか旅順フィールドを攻略した後、二人にあとを任せて一人歩き出した木戸は自分に言い聞かせた。
 
 いや、思えばずっと以前からおかしくはあったんだ。ただココはそういう国なのだと思い込んでいたけど。
 もしかしてこれは現実ではないのでは?

 ようやくその手の考えに至った木戸。とにもかくにも大事なことは桂に時計を返してもらい、自分の部屋への帰り道を教えてもらうことだ。ウサギがあの部屋からこの国まで時計を持ち帰ってしまえたのだから、木戸がこの国からあの部屋まで時計と一緒に 持 ち 帰 ら れ る ことは可能であるはず。


「あっ、いた!」

 いつの間にか街の中に迷い込んでいた木戸は、曲がり角のところを例の白いウサギ耳が揺れるのを発見し、小走りでその角を曲がった。

 のだが。

「わ、わわわわなんだこの人たち!」
 なぜかその場を埋め尽くす群衆のひどい暴動に巻き込まれ、先にも後にも退けなくなってしまった。
「ちょ、何なにが起こっているんだ一体この不思議の国では!」
 木戸の悲鳴は日比谷の空に空しく吸い込まれていった。





<<       >>