請qin
「やぁ龍居くん久しぶり」
中村是公満鉄総裁の後ろにいた龍居は、まさか声をかけられるとも思っていなかったので心の中ではひどく驚いた。
しかしそんな素振りはつゆとも見せず、黙って会釈を返す。
「君ってやっぱりそういう感じの立ち位置なのね、しっくりきすぎてて全然久しぶりの感じしない、元気?」
「お陰様で。伊藤さんは、相変わらずお元気ですね」
もう第一線なんてとうの昔に退いたはずなのに、韓国の統監をしていたかと思えば日本で元老会議をしたり首相をいびったり、ロシアに寄ったり、そうしてあちこち忙しなく行ったり来たり。
今回も、途中ハルビンに寄っていくのだと言っていた。
「まぁねーでも流石に汽車に乗りっぱは腰に来るよ腰に。年?ねぇなんか飲み物ちょーだい、あ、そうそう」
相変わらずどうでもいいこと、いや他愛ないことを、本当にどこから来るのか元気いっぱいにまくし立てて、大日本帝国の大重鎮、伊藤は子供のように笑いながら言った。
「ミヨがね、見送りに来てくれたよ」
お出迎えしてすぐに出発の時間だったので、頭の片隅で時間を気にしていたから一瞬聞き間違えたかと思った。
「はい?」
「ミヨだよ、ミヨ。船が出る直前までわざわざさ、珍しいでしょ。あいつ本当出不精だからねー」
彼が極度の出不精なのは確かにそうだけれど、それは貴方が見送りなんてめんどくさいことするより仕事しろって言ったからじゃないですか。と恐ろしく前のことをぼんやりと思いだして、龍居はそうですか、とようやく微笑んだ。
それは彼の長年の言いつけへの反抗なのか、それとも。
「来年は清に行くから、ついておいでって約束してきたよ」
過去にあった色々なことをこうもあっさり投げ捨てて、(彼らの間に立たされたせいで未だに頭にこびりついているあの時の一言一句はいつになったら擦れ落ちてくれるのか問いただしてやりたい、双方に)伊藤は列車に乗り込む。
「龍居くんも一緒においでね」
「・・そうですね、是非」
友人をして病気と言わしめんばかりに「口がヘタ」な中村総裁とこうした大事な御接待をするよりも、
そちらのほうが負担が明らかに心身ともに大きそうだ。是非とも遠慮しよう。いや断固として遠慮しよう。
そんな龍居の決意がなされた頃、列車は乾いた大陸を走りだす。コートの前は閉めていこう。もう10月も終わりの季節。
伊藤博文がハルビンで暗殺されたという知らせが
日本に届いたのはそれから幾ばくもない日のことだった。
「・・・」
ふとした瞬間に、湿度の高い空気を吸い込んであぁ帰ってきたのか、と実感する。それくらいには極度の混乱の中で海を挟んで向こうとこちらを行ったり来たり。
やはり懐かしい祖国の真ん中(物理的でなく、もちろん)で、見慣れた後ろ姿を見つけた。
なんて声をかけようか迷っている間に、あっさりと気づかれた。
「何?」
「・・何、もないですけど」
さすがにその言い草はひどくないですか、久しぶりですよ随分。
といったような言葉は今の彼にかけることはとてもできなかった。昔からできた試しもないが。
「久しぶり」
「、お久しぶりです」
今まで滅多に見たことないような、全身真っ黒のスーツをきちんと身につけている巳代治を思わずまじまじと見てしまう。もちろん初めて見たわけではない。彼は意外にも普段は派手な服を着なかったけれど、だからといって黒を身につけることもそれほどなかったと思う。違和感はそれだけなのだろうか。
龍居の視線に気づいたのか、相変わらず不遜にため息をついて、巳代治が言った。
「誰を見てもおんなじようなの、喪中なのはわかるけど、黒ばっかで飽きちゃう。右も左も」
「巳代治さんは後ろからでもすぐにわかりましたけどね」
「あっそ。よく出来ました、とでも言えば満足?」
「巳代治さん」
彼の元を離れて少しの時間は経つのに『久しぶりの感じがない』慣れ親しみ過ぎた報告を待つ巳代治の雰囲気に、思わず口をついた呼びかけの先が続かなかった。
「何もないなら、行くけど」
「どこ行くんですか」
すると巳代治が若干苛立たしそうに振り向いた。
「カネケンとこ!仕事は大量だし、あいつちょっと気抜くとすぐふぇええってなってるんだから!」
あぁ羨ましい少しは見習ってください。しかしそんな言葉をかけるには龍居はいささか疲労の度合いが強かった。
「用事あるならさっさと言いなさいってば、言っとくけど慰めようなんて百万年早いから」
その素晴らしく予想のついていた言い草に、龍居は思わず聞かれない程度にため息をつく。こんなくだらない特技も、外れない予想も、全部全部。
「今の巳代治さんを慰めようだなんて アホ がいるんですか?あの知泉ですら神妙な表情して黙ってましたよ」
知泉は巳代治に思ったことをそのまんま言える得難い人物、龍居に言わせればいわゆるアホではあるが、さすがに今回ばかりはその得意の筆も口も折っているらしい。
巳代治はいつもの、というか長年の不機嫌な様子で、ふん、とそっぽを向いた。
「・・・で、役に立たない慰めでもないなら、何?」
ドアを蹴って出て行きはしないくせに、どうして随分強気なことで。
「久しぶりなのに、冷たすぎじゃないですか」
「今更そんなの求めてどうすんの?しかも言うほど久しぶりでもない」
「でも、色々ありましたよ」
「有益な情報なら聞いてあげる」
「いつものみたいな感じです」
「そ、じゃ、いつもみたいに簡潔に」
そこで巳代治が挑発するかのように微笑さえ浮かべた。
「伊藤閣下がー」
「やっぱりダメ」
巳代治の手が龍居の口を塞いで、それが突然だったので正直息が詰まって苦しかった。
それが巳代治に口を塞がれたせいなのか、自分で詰めてしまったせいなのかはわからなかったが。
目はあわせてくれない巳代治は吐き捨てるように、小さい声で言った。
「お前の言葉じゃ、信じちゃう」
あぁやっぱり。笑い出してしまいそうな不謹慎な衝撃に耐えるため、龍居は敢えて抵抗しなかった。
コチラがそれなりに覚悟を決めて会いに来たのに、あまりに普段と変らない様子で。
憔悴しているのは確かだけど、そんなもので済む話ではないくせに。
慰めではありません。それ以前の問題なので。
龍居が自分の言うことは聞くと信じて疑わない巳代治の手首をとって、力をこめて引き離す。そういえば指輪もしていない。
「龍居は同じような立ち位置ばっかりで久しぶりの感がないと」
「龍居!」
ようやく真っ正面から怒ってきた、戸惑いに若干揺れた巳代治の目を見つめ返して、久しぶりに『ご報告』。
「巳代治さんが見送りに来たと喜んでましたよ」
「やめて・・・って」
ささやかな反抗の成功と、これは予想できなかったささやかな懇願に、溜まっていた疲労の少しは報われた思いがした。
肩に食い込む痛みに耐えて、
「来年、清にでも行きましょうか」
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カネケンふぇええええぇえええ( ;∀;)←
なんかミヨがデレ(?)てしまった(?)けどどうしましょう/(^o^)\
龍居というかミヨ系はミヨに対しては皆Mだけど本質的にドSだといいのよとてもいいわよ!!(;゚∀゚)=3ハァハァ・・・
この後の二人とふぇええしてるカネケンについては皆さまのご想像にお任せしますよ・・
とにかく意味がわかりませんでしたがあれです、
伊藤と龍居の会話とミヨのやめて、が書きたかっただけですあれ?
勢い、そう勢いなの・・結構時間かかったけど・・くっそ俺の睡眠時間・・
伊藤・・・全然追悼できてなくてごめん・・・・・